「麻紙の放菴か放アンの麻紙か」
小杉放菴は明治14年(1881年)に生まれ、洋画を学んだのち日本画も描くようになり、水墨の表現に関心を深めました。山水や花鳥を描き、書や詩をよくし、東洋的な文人の世界を体現した画家として知られています。
放菴は越前和紙の名匠、初代岩野平三郎と深い親交があり、2人のやり取りの中で作られた麻紙を放菴はことのほか愛用します。この紙はのちに「放菴紙」と呼ばれるようになり、麻の粗い繊維の混ざるこの紙は、他の画紙には無い風合いを持っています。墨のかすれと淡墨の微妙なにじみを特徴とする放菴後半生の画風を支えた紙と言っても過言ではありません。
本展覧会は、小杉放菴記念日光美術館と福井県立美術館が所蔵する放菴の麻紙を用いた作品とともに、書簡など平三郎家ゆかりの資料をあわせてご紹介します。枯淡な色使いや心動かされるタッチで描いた放菴の作品と共に、麻紙の魅力を感じてみてください。